学力低下と大学の大変革! 8/23
本塾では毎月初頭に様々な教育情報を送付案内でお送りしています。 7月には学力低下や今後の教育について大きなニュースがたくさんあり、外部の方もぜひ知ってほしい変化がたくさんありました。 そこで8月号の内容を一部紹介致します。 今後の学習にご利用ください。
中学生の学力低下について
全国学力・学習状況調査で中学生の数学の正答率が初めて5割を切ったことが報道されていましたので、近年の平均点の推移をまとめました。近年の全国学力・学習状況調査は出題数が少なすぎる問題がありますが、一覧表にすると継続的な点数減少は明らかです。ゆとり教育時代の設問とも難易度は大差ないと思いますが、過去の問題を解けるかぜひ確認してみてください。
年度 | 小学国語 | 小学算数 | 中学国語 | 中学数学 |
2025 | 67.0 | 58.2 | 54.6 | 48.8 |
2024 | 67.8 | 62.7 | 58.4 | 53.0 |
2023 | 67.4 | 62.7 | 70.1 | 51.4 |
2022 | 65.8 | 63.3 | 69.3 | 52.0 |
2021 | 64.9 | 70.3 | 64.9 | 57.5 |
2019 | 64.0 | 66.7 | 73.2 | 60.3 |
2018 | 64.5 | 58.7 | 73.2 | 61.3 |
2017 | 68.4 | 65.1 | 76.7 | 60.4 |
2016 | 67.0 | 64.2 | 74.1 | 57.5 |
2007 | 75.0 | 74.2 | 80.0 | 69.1 |
2019年以前は問題形式が異なるので現在の形式に合わせ基礎・応用の得点を平均化して表示しています。2020年はコロナで未実施です。余白の都合上2016年より前のデータについては最古の2007年のみ載せました。
設問ごとの内訳を見ても、小6で小4分数、中3で中1素数といった、非常に簡単な問題でさえ正答率が30%なのは問題です。
ただどれくらいの学力低下なのかは、意外と比較が難しく、国の分析結果を待ちたいです。以前から述べている勉強時間の低下のほうが問題で、小学生だけでなく中学生も顕著になりました。いよいよ改革が必要で、その一部が後述する教育改革と言えるのかも知れません。
※8/1の送付案内のため、学力低下の内容については深い検討・調査を掲載していませんが、その点に関しては今後記事を執筆します。
学習態度が評定外に
次期学習指導要領において小中高の学習態度(つまり主体的に学習に取り組む態度)の扱いが見直されるようです。現時点ではまだ検討中のようですが、観点としては残しつつ評定から除外する案が出ており、ポジティブな要素のみ○を付けるようです。
観点別評価の考え方が広まったのは1977年、本格実施されたのは1989年と言われます。つまりゆとり教育(1980年〜2012年)の名残であった評価法を、半世紀ぶりに改めることになります。
この改革によってテストが100点でも態度が悪いから成績は3、のようなことはなくなっていきそうです。より実力で判断されることになるので、寡黙で真面目な子や、学校外できちんと勉強している子には良い方向に進むでしょう。ただし勉強をしていない子は救済余地が削減されるため、ストレートに1が付く可能性が上昇しそうです。実際になってみないとわからない部分はありますが、小学校からきちんと勉強することはより重要となりそうです。
理系比率の引き上げ・助成金の見直しについて
政府は私大理系に助成金を手厚く配分することを決定しました。他にも6月に優れた私立大を研究拠点大学に指定し、重点的に助成金を配分することを決定しています。AIやロボットへのニーズが高まり文系人材が28万人過剰となり理系人材が107万人不足すると試算し、文系に偏っている私大学部の再編を促すことで、成長分野に人材を供給できるようにするとのことです。2032年ごろまでに理工農学部の学位取得者を現在の理系35%、文系65%の比率から、50%へ引き上げることを目指す数値目標まであります。この改革は高専にも関係があります。
すでに2023年度から一部で見直しが進んでいて、2024年度から、①私立大の理工農系分野の学部・学科に進学する場合は、子どもの人数に関係なく私立大の文系学部の授業料との差額分相当の学費減免支援を受けられるようになっており、学費の問題も減少しました。②情報や数学、文理横断的・探究的な学びなどを強化する学校を支援する高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)が始まっており、理系の強化に力を入れ始めています。
しかし理系の比率を増やすには、これだけでは不足しています。高1の文理選択の時点で理系の選択比率が大幅に上がらなければ不可能だからです。質の高い教育の実現に向けた高校教育改革を推進する見解は既に示されており、さらなる改革が予想できます。普通科で地域発展の学際的研究を行ったり、理数教育推進のための研究などをしていることが伺えます。
私大の縮小促しについて
理系比率の引き上げ・助成金の見直しの話は2024年12月に遡ります。文部科学省は経営難の私立大に規模の縮小を促すことを決定しています。重要な点を引用します。
収支が悪化した大学には私学助成金の交付条件として経営改善計画を提出させ、上向かなければ助成の減額も検討する。少子化が加速する一方で私大は増えており、突然の破綻により学生側が不利益を受ける懸念がある。早期の経営判断を求めた形で、統合・再編の流れが強まる。
中央教育審議会のより詳細な内容には、(1)高等教育の質の向上、(2)社会的に適切な規模の高等教育機会の供給、(3)地理的又は社会経済的な観点からのアクセス確保による高等教育の機会均等の実現が3本の柱として記載されています。1については「出口における質保証」の促進(厳格な成績評価や 卒業認定の促進 等) 、認証評価制度の見直しに注目したいです。2については再編・統合の推進、縮小・撤退への支援に注目したいです。
関連する報道としては、私大の学部新設、審査基準を厳格化へ「定員7割以下」は原則不可がわかりやすいです。全国2割が該当すると言われており、統廃合が促されていきます。つまり大学設立を推進した1990年代の政策を完全に方向転換したことになります。1990年に約490校あった大学は、2000年に約660校、2020年に約800校と大幅に増加しました。2割減少すると約640校が目標基準となります。
今後の大幅な改革を予想し、各大学も様々な改革を行いつつあります。様々な大学で理系学部が新設されました。国公立大学は既に理系5割を達成しつつありますが、私立大学は20%近く引き上げないといけないため、今後も大幅な改革がされていきます。大学の8割は私立です。
大学基準の改訂について
前述の大学の質保証のために、2025年から大学基準が改定されました。大学基準及びその解説・新旧対照表から特に重要な点を列挙します。
- 学位授与方針、教育課程の編成・実施方針及び学生の受け入れ方針を設定する
- 大学は、学生の学習成果の達成を目指した教育が期待される水準を維持できるようにし、さらにその適切性を説明し証明していかなければならない
- 授業科目の内容・方法に応じて、客観的かつ厳格で、公正、公平な成績評価及び単位認定の方法及び基準をあらかじめ学生に示す必要がある
- 学習成果の達成につながる教育の実現や大学として目指す研究上の成果につなげていかなければならない
つまりボーダーフリーな運営ではなく、教育目的と達成基準の厳格化を求めています。さらに次期改定(2032~)では在学中にどれくらい力を伸ばすことができたのかで大学を評価する大学認証評価制度の改革が検討されています。穏健派の文科省でも「評価が低ければ改善を求め、最終的に学生募集の停止といった撤退を促すことも想定する」と、踏み込んだ内容になりそうです。
以上のように大学の在り方は既に大きく変わりつつあります。近年のゆるい大学観を廃止し、昔のより厳格な大学へ転換しつつあります。小中高校も変化していきます。
学習態度が評定外になり質保証が加われば、まずは推薦入試に影響が出ます。既に成績がインフレし過ぎて高校の評定を基礎学力の証明として大学側は見ていない事例も出ていましたが、高校入試でも同じような問題は起きていたはずです。次の変化は社会人になったとき実力主義で育った子たちが後輩になることです。今の小中高大学生は適応できるよう変化していく必要があります。
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